まほうのはなし
今朝蝉の声を聴いた
今年の夏に入ってはじめて聴いた
おふとんの中でのまどろみの中、
「あ、蝉が鳴いてる」
と頭に降ってきた住人の声で、
蝉の声を聴いた。
本当は、もっとはやく蝉の声を聴いていたのかもしれない
蝉はもっとずっと前に、
わたしの傍で鳴き続けていたのかもしれない。
世の中には聴こえていない音がたくさんあれば、
見えていない景色もたくさんある。
ひとりの人間が感知し、認知するには
この世界は煩く、あまりにも鮮やかだ。
そんな世界で、
今朝わたしは蝉の声を聴くことができた。
「あ、蝉が鳴いてる」
この言葉こそが、わたしが"まほう"と信じているもののひとつ。